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zoom RSS 「花の名前」全4巻(斎藤けん:LaLa DX)

<<   作成日時 : 2008/12/02 18:40   >>

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【あらすじ】
事故で両親を失い、ショックから心を閉ざしてしまった蝶子。
そんな彼女を引き取ったのは遠縁の小説家・京だった。
自らも心に闇を抱える京が、小説「花名」に込めた想いとは・・・!?

【登場人物】
<水島蝶子>
お嫁にしたい少女漫画のヒロインナンバーワン!!(カピ原脳内調べ)
京さんが湯のみを差し出せば急須をサッと差し出し
京さんが「アレとってくれ」と言えば醤油をサッと差し出す!
こんな大和撫子いまどき漫画の中にもいませんよ!
健気で前向きな好感の持てるヒロインです。

<水島京>
自分で自分をわざと苦しめて、どんどんダメな方へ沈んでいくという・・・
イイですね…(笑)
物語が進み、京のダメな部分が明らかになるほどに魅力が増します。
京さんのダメな部分に共感してしまう私もダメ人間です(笑)

<秋山慎一>
明るくて、それでいて考えが深くて、いつも京と蝶子を見守っている、
カレカノで言うところの浅葉くん的立ち位置。こういう人、大好きです。
この人がいなかったら花の名前は単行本化していなかったかもしれません。
蝶子と京の二人だけだったら「pp−ピアニシモ−」(初期の読みきり。単行本未収録)のように閉じた世界のまま物語が完結していたのではないでしょうか。
本作のMVPは秋山さんにあげたいです。

【各巻感想】
<1巻>
まず最初に説明したいことがあります。
「毎回冒頭に入る説明的なモノローグが鬱陶しい」
と思う方がいらっしゃるかと思いますが、
これはララDXという掲載誌の性質上仕方ないことなのです。
ララDXは読みきり作品がメインであるため、初めて買う人でも連載作品に入り込みやすいようにという配慮がなされているのです。
1巻は作品内の時間は進みつつも登場人物や舞台は固定されており、閉じた感じの世界観となっていますが、これは読者への周知期間ととらえるべきでしょう。だから許してあげて!(笑)
次に作品の内容に関してですが、私が一番感心したのは上記のような制限の強い掲載誌であるにもかかわらず、けんさんがしっかりと構成を考えていたことです。
蝶子の父と京に面識があったことや、京の過去に何かがあったことを匂わせてうまく布石を打っています。
また1巻の最終話は第一話のラストを京の視点からなぞるという手法で物語りに奥行きを持たせるとともにうまく第1巻を締めています。
ちなみにこれも「1巻が売れなければ2巻は出ない」という過酷な白泉社事情を意識したためかと思われます。
……でもね、フツーの新人さんはここまで考えてかけないですよ!
私がけんさんにやたら入れ込んでいる理由をわかっていただけたでしょうか(笑)

<2巻>
2巻に入りすぐに、説明的なモノローグは消え、新キャラが投入されます。
閉鎖的な世界に新しい風が吹き込み、物語は前に進み始めます。
1巻とは打って変わり、すぐに連載を意識した展開になるところに作者の技量を感じます。
大正文士の会のメンバーという普通の大学生が登場することで京や蝶子の浮世離れしたキャラクターや生活が引き立つのがいいですね。

<3巻>
京が蝶子と暮らしていることを知った伊織の
「拾ってきて育ててるの?いやらしい男ね」
というコメントが…いや、ほぼその通りなんですけどね(笑)
しかし、伊織のセリフはいちいちイイですね。
「相変わらず 狭い処で生きてるのね」
「わたしが駄目にするんじゃないわ あの人は もともと駄目なのよ」
「救われる気なんてないくせに」
などなど、独特のテンポの鋭い言葉で京の心をかき乱すところがもう最高です(笑)

<4巻>
最終巻です。
……正直私は何かすっきりしないものを感じました。
ラストシーンや巻末のおまけ漫画はしっかりハッピーエンドでいいのですが…

そこで何がすっきりしないのか少し考えてみました。

一番の原因は、京が結局のところ自分の問題を克服できていないことだと思います。
三鷹の家を買い取ることで過去と決別したということなのでしょうが
これでは京が救われたことにはなりません。
私としては、三鷹の家から祖父から京や母にあてた遺言が見つかり、京が祖父の想いを知るだとか、
夢でも幻でもいいから京が母に謝り、許されるといった描写が欲しかったです。

そしてもうひとつは蝶子の祖父の死です。
蝶子と祖父の別れ、そしてそこから蝶子が立ち直る姿が描かれなかったのが残念です。

この二つの問題点は、「花の名前」におけるけんさんの「死」の描き方に対するスタンスに原因があると思います。
ここでは、けんさんは死ぬ人間より、残された人間を描くことに重点を置いています。
「花の名前」の作品世界では死にゆく者は何も残さずに唐突に死に、
残された人間が苦悩する姿だけが描かれます。
それの善し悪しは好みの問題であって、論ずるべきではないのかもしれませんが、私はやはり、死にゆく者は残される者に何かしらメッセージを残して欲しいと思います。
それがなければ、残された者は最悪前に進めず、作品が内側に閉じていってしまうからです。
「花の名前」はセンシティブではあるが、泣かせる作品ではない原因は、
「死」をいわば舞台装置としてしか使っていないところにあるのだと思います。

……なんだかものすごい辛口になってしまいましたが、私のけんさんに対する評価はかなり高いということだけはもう一度強調しておきます。これだけあれこれ言いたくなるのは、その作品に、語るべき魅力があるからだと思います。
なお、「with!!」においては「肉親の死」という同じテーマを使いながら、花の名前とは全く違った、前向きなアプローチがなされているので、私と同じような物足りなさを感じた方はこちらを読むことをオススメします。

【総評】
少女漫画界における日陰に咲く花ですね。
綺麗で儚くて切なくて、・・・いとおしくてたまらない作品です。
重い設定ですが、蝶子の健気さや秋山さんの優しさに心がじんわり温まります。
また、シリアスなシーンばかりでなく、随所にユーモアがちりばめられているのですいすい読めます。
シリアスな部分ばかり語ってしまいましたが、けんさんのギャグセンスはかなりのものだということを付け加えておきます。

それから、人間の心の闇や孤独や狂気にある種の「美」を感じてしまう人は
この漫画にどっぷりハマってしまうと思います。
ちなみに私もそんな人間の一人です。
京さんに「変態」って言われちゃいますね・・・(笑)

【評価】
☆☆☆+ 星3.5
絵柄に華があって非常に魅力的。
基本的にシリアスだけどギャグにもキラリと光るものがあります。

こんな漫画が好きな人にオススメです
 ☆「フルーツバスケット」(高屋 奈月)
 ☆「ハチミツとクローバー」(羽海野チカ)


花の名前 1 (1)
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斎藤 けん

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【斎藤けん作品リンク】
「with!!」全4巻 (斎藤けん:ララDX)
「プレゼントは真珠」全4巻(斎藤けん)
「亡鬼桜奇譚」(斎藤けん:LaLa)
「ねじ巻き真野さん」(斎藤けん)
「雪のカノン」(斎藤けん:ララスペシャル・LaLa4月号増刊)(「プレゼントは真珠」1巻に収録されています)

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